2016/01/21

岡田利規「GOD BLESS BASEBALL」チームはNYジャパンソサエイティでの公演を終え、バスでフィラデルフィアに移動した。この地で公演と同じくらい楽しみにしていたのがフィラデルフィア美術館に収蔵されているマルセルデュシャン“大ガラス”を見ることだ。フィラデルフィア美術館にデュシャンの“大ガラス”が展示されていることを認識したのは、サイトにアップされていた室伏鴻さんの日記を読んだからだ。2002年。今から14年前の日記だ。

3/14 thu. 
Painted Bride Art Center -初日。小屋入り前、タクシーを飛ばして、Phiradelphia Museumへ。デュシャンのコレクション。遺作の「沈黙」と「ノイズ」の絶妙の混ざり合い・・・幸せな気分で3回も覗いてた。「独身者の花嫁」のガラスは見事にヒビ割れていた!(これは今夜の自分の踊りに確実に共鳴。)
「Edge-Philadelphia」を4番目(トリ)で踊る。中間にArtist Exchangeの全員にゲスト3人加えた「Collective Improvisation」がある、間を盗んで上手から下手へ走り抜けると受けておりました。自分のソロは、匿名の喉、声の、ニホン語と英語のバランスが良かったと自己評価。しかし、無明の喉をついて出たのは、なぜか死んだ妹の「名」であった。「Just as the edge of Philadelphia !!」の声を背に、劇場にシャワーがないのでホテルへ直行、銀を落とす。

http://www.jcdn.org/tipics/ko.htm

検索するとまだサイトが残っていた。ありがたい。

これを読んだことがきっかけでフィラデルフィア美術館は死ぬまでに訪れたい場所の一つとして僕個人のリストに記すこととなった。アメリカ公演で見ることが出来なかった室伏さんの“共鳴”。フィラデルフィア美術館1階の最後の部屋には現代美術のルーツではなく、きっとダンスの秘密がある。映画「ロッキー」でスタローンが駆け上がった階段を室伏さんもはしゃいで駆け上がっただろうか。開館と同時に入場し、古文書を紐解くような興奮と、墓参りに行くような静けさを纏いながら、デュシャンのコーナーに辿り着くのが展示の最後になるように、 1階現代美術のコーナーを迂回して見て歩く。そして辿りついた“大ガラス”は、何というか、まさに“見事にヒビ割れていた!”。そして“遺作”のバカバカしさ。爽快だった。今年一番爽やかな気分で大笑いしてしまった。俺はこの爽快さを日本に持って帰ろう。そして横浜で笑っちゃうようなヒビに共鳴しようと思う。

http://ko-murobushi.com/outside-2015/

フィラデルフィアではヨーゼフボイスの黒板もヒビ割れていたし、自動車の後部もヒビ割れていた。次に訪れたムター博物館では銃弾に撃ち抜かれた骨片が多数展示されていて、ここにもヒビが。館内は写真撮影できなかったが、他にも室伏さんがたくさんいた。石鹸化した死体-DEAD BODYが一体まるごと展示されていて、ショップではその死体を模した石鹸が売られていた。

“人類は泥濘、石鹸、煙に変えられ“
タデウシュカントル 〜20世紀の終りを前にして-第十二回ミラノ講義
(工藤幸雄 訳)

http://blog.goo.ne.jp/mirojoan/e/7ba864115d0126bba230fdca480b7d2c

石鹸の人体も確実に共鳴。これもダンスの秘密に出会ったような気分にさせられた。他にアインシュタインの脳ミソなど。干物、生物、ごちゃ混ぜに展示されていて、これらも密やかに共鳴。

 ムター博物館の話をすると共演者のソンヒさんが激しく反応し、見に行きたがっていた。ソンヒさんに買い忘れた石鹸のお土産を頼もうと思う。