2015/01/01

明けましておめでとうございます。
年末にこれまでの自分の仕事を振り返ると、それらはまるで地図を描く作業に似ていると思った。どの時間の流れを生きていて、どの場所に立っているのか。身の回りにあるもの、体に蓄えられたものを棚卸しして数える。そろそろ人生の半分、東京に住んでいることが原因になっているのかもしれない、自分なりの東京の地図を描く作業を継続したいと思い立ち、昨晩8時に要町を出発して、2015年に新作をつくることになっている横浜赤レンガ倉庫まで歩きながら街を見ることにした。

都市を歩くのは言葉の中を泳いでいるようだった。ここには人間が作った名前を持っていないものは一つもない。名前のないものは都市にあるだろうか。

人気のない公園、駐車場の街灯。閉店後のカフェ、キッチンから漏れる照明。自動販売機。神社の提灯。手に持った誘導灯。人が来るのを待っているように誰もいない場所に点いている明かりは、気持ちを落ち着かせる。

多摩川にかけられた丸子橋を渡っている途中で突風に見舞われる。体を吹き飛ばしそうな強い風にのって祭囃子が聞こえてきた。橋を渡りきると急激に体力を消耗して疲れ果てていた。関所を抜けたような感覚。

異なる神社の鐘をいくつも聞き。寺を中心に、鐘の音が届く距離で区切られるエリアとエリアの境界をいくつも超える。初詣の参拝客の流れを横切り、合流し、わかれ、また合流し、わかれ。山手通り、綱島街道、旧綱島街道、環状8号線。東急線、京浜東北線、湘南新宿ライン。マンホールからは下水の流れる音が聞こえる。支流が交わり大きな川の流れに注ぎ入り、また支流に分かれる。人も車も電車も、水の流れも、海に注ぎ入る。2015年になった瞬間目に飛び込んだのは、道路標識に書かれた漢字一文字“南”だった。南へ。川を下るように道路を歩いていくと海に出る。

横浜市場を越え、みなとみらいへ繋がる橋の上からランドマークタワーと海にめがけて大津絵を絶唱する。誰もいない。朝4時過ぎに赤れんが倉庫に着く。オールナイトイベントを開催しているらしく、音楽に疎い僕が聞いてもイケていない感じのする四つ打ちが外まで漏れ聞こえている。

日が出る前に電車で帰宅。風呂に入って昼過ぎに起きると、ポルトのおせちとお屠蘇が。森さん、お疲れ様でした。大友良英さんのラジオを聴きながら。正月らしいテーブル。本年も宜しくお願い申し上げます。