2014/11/10

11/10

ソウル→秋田→ソウル→釜山→東京。一ヶ月ぶりに帰ってきた。都市のストレスすら愛おしく感じられるくらい。ソウルでのことをまとめて書いておく。

10/12
ナムジュンパイクアートセンターで、マジシャンのレクチャーパフォーマンス。テレビにも出演している有名なマジシャン。インチキなテクノロジーでマジックの種明かしをする。物質転送の箱が超ハイクオリティの3Dプリンタであるとか、もちろんフィクション。普通のマジックが見たいな、と思っていたら頭が痛くなってきた。NJPセンターに入った時からクリック音がずっと聞こえていたのでそのせいかも知れない。テレビモニターを利用したインスタレーションがメインの会場の中にいるので、その電磁波のせいかな。気分が悪いので外をウロウロする。打ち上げは近所の豆腐屋。ボムのディレクターの李さんが感想を求めてくる。自信がある様子。僕はほとんど見ずに外に出てしまったので申し訳ない。打ち上げの席で向かいに座っていたのが美術作家のジョンヨンドゥさんで、びっくりする。これまで様々な展覧会で作品を見ている大好きな作家。日本語も少し話せるらしく、僕らと入れ違いで日本に滞在して水戸で展示の準備をするのだそう。楽しみだ。

10/13
たまたまソウルに滞在していた俳優の宮崎晋太朗さんと合流し、タッカルビのレストランで夕食。sidanceのプログラムで、campoというベルギーから来た二人組のパフォーマンスを見る。今年のフェスティバルボムにも参加していたユニットで、塚原くん、三ヶ尻くんが教えてくれた。ボムとは違う作品で、何というか、下品な身体表現サークル。全裸になってお互いのペニスを捻ってコヨリ状にしたり、唾を掛け合ったり。下品は嫌い。下半身を露出しても品が欲しい。下品の品格。面白かったところは、一人が床に寝そべってもう一人がその上に乗って歩く場面。上に乗っている人間が下の人間を踏みつけている、そう思って見ていると、時々下の人間が体を揺すったり、進む方角を変えたりするので、上に乗っている人間がバランスを崩して倒れそうになってまう、その時に見える力関係の逆転。地震ー地面と人間のヒエラルキーを連想してしまう。ただし最後まで話しっぱなしの方と、無言なもう一方のパフォーマーの力関係が完全に逆転して見える場面がなかったのは残念。観客は大喜びで、ジエに、ソウルの観客はいいね、というと、海外カンパニーが来た時だけだという。国内のアーティストには冷たく、厳しいのだそう。コさんも同じことを言う。このねじれ具合が韓国。ベルギーから来たシンタと、コさん、ウーヨン、宮崎さんと、二年前に行ったのと同じマッコリバーへ。釜山で会ったアジトのメンバーも合流する。シンタが香港デモやオキュパイの方法について意見を求めるたびに、俺シンポジウムに来たんじゃなくて飲みに来たんだけれど、とかわすのが可笑しい。二件目で素人の乱・松本哉さんと合流。初対面だったがもちろん知っている。井手くんが共通の知り合いで、あのキチガイ、というので同意。三軒目でカムジャタンをご馳走してもらい帰宅。

10/15
友人のジスンさんにチョングッチャンのうまい店を教えてもらう。ジエと行ってみたら貸切。店にいたのは、なんと映画監督キムギドクの一団だった。

10/18
ソウルアートセンターでkncdcのプログラム。Lee Min Kyoungというリヨンで活動している韓国人アーティストの作品。The Rite of Spring。古今東西の様々な春の祭典の振り付けを、本人ともう一人の男性ダンサーと交互に再現しながら、各振り付けについて、舞台外から解説者が説明する。レクチャーパフォーマンスだと思って期待しないで見ていたら、これが予想以上に面白かった。ニジンスキー(ホドソン×アーチャー)、イヴォンヌレイナー、田中ミン、グザヴィエルロア、ピナバウシュ、etc、おそらくほとんどは映像をスコアにして振り付けを起こしたのだろう、見たことのある振付が展開されるが、その身振りはダンスというよりダンスのマイム、活き活きとしたものがこちらに何も伝わってこない。ところが、二人とも組み合わせを変えて延々と続けるので、素面では居られなくなってくる。体力を消耗しながらひたすら動き続けているうちに、最初はただのプレゼンテーションだったはずのものが、観客の視線に対峙してどう時間を埋めるのか、どう存在するのかを問われてしまう真剣な局面に突入してしまった様子。こんなはずではなかったのに、、、。アーカイブの再利用でパフォーマンスを作ろうとしたコンテンポラリーアーティストが、亡霊に振付られて踊らされているように見えてくる(ミンさんも、レイナーも、グザヴィエもまだ存命だが)。そこに解説者の声と、初演時に客席から飛んできたという野次を元にしたテキスト、“歯が痛いのか?歯医者を呼べ!”、の声が重なってくる。もうこれはプロレス!終演後もストラヴィンスキーの曲が耳から離れない。アンエスンに、超よかった!と伝え、ジエとご飯へ。会場では鈴木優理子ちゃんやジエともコラボしているファンスヒョンや、前回の福岡釜山プロジェクトに参加していたダンサーのヨンスンとも会った。

10/20
ソウルアートセンターでダンスアーカイブの展示。コンオクチンのビデオをフルで見られて満足。舞踊というより歌謡ショー。病身舞はそもそものフォーマットからして舞踏とは別物なのだろう。いくつか見た中でも舞踊は洗練されているのに、他の芸能になるとヘンテコで野暮ったいものがたくさんある。魅力的。アンエスンの30年前のパフォーマンスがビデオで流れていて、若い頃の彼女のインタビューを聞くことが出来たジエは興奮していた。映像アーカイブは公開されていて、開架に並んであるDVDを勝手に持ってきて、備え付けのモニターで見ることができる。次回はここに通おう。見たいものがたくさんあった。映像資料室の入り口に面した廊下の壁に書かれていた英語のテキストはティムエッチェルスの作品だったそうだが、気がつかず、しっかり見て来なかった。図書室ではmp3プレイヤーを聞きながら、机に並べられたダンススコアを見るインスタレーションがあった。アイディアはいいがイマイチ。他にアンヌテレサドゥケースマイケルのレクチャー映像など。ハングルが読めないのでわからないが、キュレーションの意図がよくわからない展示だった。