2014/04/26

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天神駅で今日インタビューする学生と待ち合わせ。女の子ともう一人、ジャージ姿に坊主頭、小脇にセカンドバックを抱えて薄い色の入ったサングラスをかけて、堅気には見えないガタイのいい男性がついて来た。聞けば今日の学生を紹介してくれたのはこの男性で、通訳を務める文さんの旦那さんとのこと。大学の先生で、何を教えているんですか、と聞けば、憲法、と返ってきたので思わず吹き出してしまった。拳法じゃないよね。警固神社の前で学生のインタビューを撮影する。しおりさん。釜山に韓国人の彼氏がいるらしい。僕もインタビュアーという振付が板についてきた。インタビューに応える様子が固かったので、タイミングを見計らって、釜山の彼氏に伝えたいことは?なんて聞いて、照れ臭そうな仕草を引き出して緩めた後で、また真面目な質問をしたり。憲法の先生も最初は断っていたが、しおりさんのインタビューで勢いがついていたので、その流れで隣の公園にカメラをセッティングしてしまう。神社を離れる時、神前式の新郎新婦が鳥居をくぐろうとしているところだった。公園で先生のインタビュー。韓国と日本は兄弟みたいなものなので、時々喧嘩したり仲良くしたりしながら関係を持てばいい、という意見が新鮮だった。そんな先生も、最後に文さんに伝えたいことがあれば、と聞くと、家事をもう少し、なんて答えが返ってきた。九州男児、と呼ばれる気質は朝鮮半島の父権社会からの影響があるのかもしれない。デジクッパと豚骨ラーメン。明太子もそうだし。他にも似ているものはたくさんあるだろう。プロデューサーのジョンミョンさんが安くてうまい料亭に連れて行ってくれる。安いといっても千数百円のランチを十数人分全て支払ってくれる。僕も韓国チームと一緒にいて、食事代は払ったことがない。どうやってお返ししようか。食事後は天神のスターバックスで休憩。突然見た顔が現れ、誰かと思ったらドタトガのヒジンさんだった。徒歩で占いの館に移動し、インタビューというか取材。初めての占い。ここでは二人に占ってもらう。店内には証明写真機のようなブースが幾つかあり、若い女の子たちでそこそこ賑わっている。ゲーセンみたい。僕を占うのは、取材を申し込んだ時に写真で見た限りではお婆さんだったので、細木数子みたいなのだったらどうしようと緊張しながらブースの中に入ると、フワっとした雰囲気の若い女性で安心した。あの写真は客寄せだったよう。取材だという意識があるので、作品に関することと、占いといえば、ということで恋愛や仕事、個人的な将来の話などを聞く。内容は通訳さんと撮影チームにには筒抜けだが気にしない。タロットを大雑把に混ぜ合わせて、何でも聞いてください、と覗き込んでくる姿に自信が感じられた。偉そうな態度はないし腰も低くて、全く圧迫を感じないが、その雰囲気の底に確かな自信がある。自信というか、答えるのは自分ではなく、あくまで占いの結果を伝えるだけのメディウムなので自信も何もない、ということなのかも知れない。こちらも自分が知りたいという欲求よりも、相手から如何に話を引き出すかを主眼において、インタビュイーに対する振付としてインタビュアーを実践する。メモを取ったり、笑顔をつくったり、頷いたり、いちいち、先生、と呼んだり。相手に対する振付として行う。そうすると予定していた倍以上の時間を越えて占ってくれたし、占いだけではなくインタビューにも応えてくれた。隣のブースに移動して二人目の占い師。タロットと四柱推命を使う30ー40代の女性。こちらも振付がうまく作用して倍以上の時間を使ってくれてインタビューにも応えてくれる。占い、始めてきたけれど面白い。特に最初の人はまた会いに来てもいいくらい。公園に戻って、時間のありそうな人を見つけて片っ端から声をかける突撃インタビュー。ヤンキーや、サラリーマなど、普段接することの少ないような人たちを見つけて声をかけて行く。嫌すぎて半ギレでやっていたが、やれば出来るもんだ。撮影クルーには、セッティングはすばやく、相手を用意した背景に呼び出すのはナシ、こちらから行くこと、を伝え、ポンポンポンポン数をこなして行く。疲労困憊。ディレクターのジウンさんからは、今まで色んなインタビュアーと仕事をして来たが、一番うまい、とお世辞を言われる。振付家だからね。勢いで屋台のサラリーマンにもインタビューして回ろう、とうことになり、現場に向かう途中、天神駅のみずほ銀行前に手相見のお婆ちゃんが座ってウトウトしていて、聞けば、天神の母、と呼ばれる有名な占い師らしい。面白そうなので自腹で個人的なことを聞く。一応撮影はしているが気にしない。充分な映像が撮れたので屋台の取材はなしにしようという提案が出たので、今日のシメ、という感じで。カメラマンのソンウが、カメラアングルのために見台の灯籠を勝手に動かしたことに対して、思わず“テメェー、ふざけんな!”と大声を出してしまう。ここ数日の撮影スタイルに対するストレスが最後の最後で発奮されてしまった。天神の母は、多分70代後半だろうか、お婆ちゃんがそのもののパーソナリティが売りで、聞いていて安心する。手元のノートに数字の計算を書きながら、手相を見て話をしていく。ここ数年、本当に気になっていたことを一つだけ聞いてみたら、そんなことは誰も気にしていないから忘れた方がいい、と言われてスッキリした。取材終了。財団に戻って、ちょっとしたやりとり。ライターのヒョンジョンに、今回の撮影の感想や、疑問に思ったことを全部話すと、それについて納得させられる答えが帰ってきた。そういうことは最初に言ってほしかったが、これで釜山の取材は大丈夫だろう。ホテルに戻って、近所の対馬物産館で食事、打ち上げ。ジウンさん、ソンウ、ヒョンジョンと。さっき財団で話した内容を撮影クルー全員に話し、皆で、そうだったのか、と頷く。明日からゴールデンウィークだというので、板さんが色々サービスしてくれる。多分一人あたり、五、六千円飲み食いしたが、パブリックマネーから出る、というのでジウンさんが払ってくれる。ヒョンジョンはここでもうフラフラになっていたが、ジョンミョンさんが来るというので、駅向こうの二軒目へ。ここでは隣の席の九州男児に絡まれたり、ヒョンジョンとジウンさんが喧嘩をしたり、色々あったが笑いながら見ていられるレベル。ホテルに帰るとヒョンジョンがもう一軒行こう、というので、一杯だけな、と言って近所の焼き鳥店へ、ジョンミョンさんも。店に入るとヒョンジョンは寝てしまい。僕は酔っ払った頭に、ジョンミョンさんから日本語知ってますアピールを繰り返されて、来たことを後悔する。