2014/03/19

3月19日

強烈な二日酔い。山野さん、西さん、遠藤さんとフェスの演目の一つを見に行く。ムンレの街並みは西成と似ている。赤線があり、巨大なショッピングビルがあり、周囲は鉄工所を中心とした下町で、その上を高速道路が走っている。今日見るパフォーマンスは去年ナムジュンパイクアートセンターでも上演された作品で、廃ビルの二階に上がると小部屋が幾つかあり、各部屋を入り口に掲げられた番号順に回って行くというもの。0と壁に貼ってある下に置いた椅子で待っていると合図が来て、一つ目の部屋に入ると椅子が二つ、前後に並べて置いてあり、その一つに女性が座っている。彼女の前の椅子に座ると、後頭部に向けて、息のかかるほどの距離で歌を浴びせかけられる。韓国の伝統的な歌唱法らしく、頭蓋が振動するのが感じられる。歌はヤバい。人が歌う、それだけで特別なものであると感じる。それを後頭部に向けて至近距離で歌い浴びせられるなんて。とても、やってはいけないことをされている気分だ。ある一つの部屋では、椅子が三つ、密着するほどの距離で向かい合わせて詰めて置いてあり、そこに座ると前の椅子に座った二人の女性がじっと僕を見つめているだけだったり、僕は出演者の顔は一切見ることができず、下を向いていた。廊下の突き当たりから非常階段に出るとまた椅子が置いてある。そこに座るとムンレの街が見渡せ、その背後に巨大なビルがそびえている。再開発されていく新しい街並みと、何世代に渡る人々の生活、その間にある赤線街。街の構造が、伝統芸能をコンテンポラリーな手法で扱った作品の構造と重なり合うようで、見事だった。廊下から、これまで入った各部屋の歌が重なり合って聞こえてくる。眼下に街を見降ろしながら、自分が日本で作品を作る時に感じる根のなさ、虚しさがこみ上げて来て、泣けて仕方なかった。日本に帰る山野さん、西さんと別れ、ホテルに戻って仮眠。夜はミャンマーからのアーティストMoe Satt、李さん、Dongyounとキムチチゲを食べる。Moe Sattは今日の本番は手応えがあったようだ、テンションが高かった。宿に帰り、買い出しが思った以上にあるのでアテンドを頼んだ。Yangheeという女の子。深夜ロビーで仕事をしていると、完全に酔っ払ったMoe Sattが一緒に飲もう、とビールを持って来たので中断。一緒に飲む、というか僕のipadで一人洋楽を検索して歌っていた。騒ぎすぎてYangheeに注意される。Moe Sattから、とある有名な日本人ダンサーが実は酷いDVであるという話を聞いてグッタリした。Moe Sattが寝た後でトヨタアワード事務局の平岡さんとskype。何とファイナリストに残ってしまった。どうでもいい、と思っているとコンペは通るのかな。嫌がらせのつもりで送った怪談のDVDと、作品説明欄には“霊障あり、取り扱い注意”としか書いていなかったのだけれど。おそらく二百を超える応募の中から、振付コンペの選考だというのにあの作品を見て僕を推した審査員は一体誰なのか、聞いてももちろん教えてはくれなかった。